労災で高次脳機能障害となったとき
1 労災保険と自賠責保険
高次脳機能障害は、病気やケガなどにより脳の一部が損傷して脳機能に障害が発生し、記憶、思考、判断などの高度な脳の機能が正常に働かなくなる病気です。
高次脳機能障害は、特に複雑で、等級認定の幅も広く、認定の難易度が高いものの一つです。
仕事中や通勤中に自動車と交通事故にあって高次脳機能障害が発生した場合には、自賠責保険と労災保険のそれぞれで後遺障害申請が可能になります。
基本的には、労災の後遺障害申請と自賠責の後遺障害申請は、どちらを先に申請してもよいことになっています。
ただし、労災と自賠責の両方で後遺障害がされたとしても、補償内容が重なっている部分については二重で補償されるわけではありません。
被害者は、どちらか使用する保険を選んで順番に申請します。
後から申請した分については、先に認定された補償分が控除され、差し引いた金額を受け取ることになります。
2 労災での高次脳機能障害の等級
高次脳機能障害は、労災の後遺障害等級としては、第1級の3、第2級の2の2、第3級の3、第5級の1の2、第7級の3、第9級の7の2、第12級の12、第14級の9に該当する可能性があります。
労災の後遺障害は、第1級から7級までは年金として、第8級から14級までは一時金として労災から支給されます。
3 自賠責保険での高次脳機能障害の等級
第1級1号、第2級1号、第3級3号、第5級2号、第7級4号、第9級10号、第12級13号、第14級9号に認定される可能性があります。
自賠責の後遺障害が認められると、原則として、自賠責から等級に応じた金額の後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益が一括で支払われます。
自賠責保険と労災保険で認定される等級については同じ等級のようにも見えますが、認定基準はそれぞれ別になっています。
4 労災と自賠責で等級が異なる場合
自賠責保険の後遺障害認定基準は労災保険の後遺障害認定基準を参考にしていますが、労災保険と自賠責保険では判断の基準が異なっているため、自賠責保険と労災で等級が異なることがあります。
自賠責保険の認定基準は非公開ですが、労働の面だけではなく日常生活など総合的に考慮して判断しているようです。
一般的には、自賠責保険等労災保険で等級が異なるときには、労災保険の後遺障害等級のほうがが高く、自賠責保険の等級が低いことが多い印象です。
労災の等級が自賠責の等級よりも高い場合には、自賠責の等級への異議申立を検討しなければなりません。
その場合には、労災の後遺障害認定結果を参考資料として添付し、追加で提出できる医学的な資料も追加して提出します。
もちろん、認定基準が異なる以上は異なる等級でもそれを基準にしなければならないこともあります。
労災と自賠責の後遺障害等級の関係は複雑です。
労災で高次脳機能障害になった場合には、弁護士にご相談ください。
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