弁護士と紹介料の支払いについて
1 弁護士と他の業界との違い
商取引の世界においては、お客様をご紹介いただいた際に紹介料を支払うことがよくあります。
また、逆に紹介した際には紹介料を受け取ることも多いかと思います。
しかし、弁護士の場合は、紹介料を支払うことも受け取ることも禁じられています。
それは、職務基本規程第13条に以下のように定められているためです。
1 弁護士は、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはならない。
2 弁護士は、依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価を受け取ってはならない。
なぜ弁護士は紹介料の支払いも受取りも禁じられているのか、疑問に思われる方もいらっしゃるかと思います。
ここでは弁護士と紹介料について簡単にご説明します。
2 紹介料が禁じられている趣旨
紹介料の支払いを許してしまうと、弁護士への事件のあっせんをなりわいとする者との結びつきを誘発してしまう可能性があります。
そして、それによって弁護士の品位を損なったり、紹介料が依頼者の支払う報酬に転嫁されてしまうことで弁護士報酬が過大になったりすることが懸念されます。
そのようなことを防ぐため、紹介料が禁じられているのです。
3 禁じられている「謝礼その他の対価」の範囲
紹介料の範囲は金銭に限られませんし、額の多寡や価値の大小、名目のいかんを問わないとされています。
ただ、紹介行為との「対価関係」が必要となっており、対価関係があるかどうかは、社会通念で決まると解釈されています。
そのため、知人・友人間の通常の社会的儀礼の範囲を超えない程度のものは、紹介料の対価ではないと解されています。
具体的には、お中元・お歳暮といった季節の贈答や飲食費の負担などです。
4 悪徳弁護士にご注意
弁護士の業務の中でも、例えば相続案件や破産管財人案件に携わっていますと、相続財産や破産財団に含まれる不動産を売却するため、不動産会社に売却を依頼することがあります。
この場合、弁護士は不動産会社に顧客を紹介するという立場になりますが、だからといって紹介料を受け取ってよいとのルールではありません。
中には、このようなルールが定められているにもかかわらず、自身の依頼者を不動産業者に紹介した際に紹介料を受け取ったりするなど、職務基本規程違反を行っている弁護士もいるようですので、注意が必要です。