個人再生と偏頗弁済
1 個人再生と偏頗弁済
偏頗弁済とは、一部の債権者に優先的に返済を行うことをいいます。
個人再生を依頼した後に偏頗弁済をしてしまうとどうなるのでしょうか。
2 個人再生が認められなくなる可能性がある
個人再生の手続きでは、「債権者平等の原則」といって、すべての債権者を平等に取り扱わなければならない、というルールがあります。
偏頗弁済は、この債権者平等の原則に違反する行為ですから、民事再生法上やってはいけないことになります。
なお、自己破産の場合、免責不許可事由という借金の返済義務の免除を認めない事情として法律に規定がありますが、民事再生法には免責不許可事由のように、一定の事情がある場合に個人再生を認めない、といった条文はありません。
しかし、民事再生法25条の「不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。」に該当するとして、申立てが却下されるおそれがあります。
3 清算価値に上乗せされる可能性がある
個人再生では、清算価値保障の原則といって、個人再生の場合債権者へ返済する金額が清算価値を下回ることはできないというルールがあります。
ここでいう清算価値とは、個人再生をする方の全財産に相当する金額のことを意味します。
例えば、200万円の全財産がある方が個人再生をした場合、債権者への返済額が200万円を下回ることはできないということになります。
もし個人再生を依頼した後に偏頗弁済をした場合、それによって清算価値が減少したとしても、それは認められません。
上記の例でいえば、200万円の財産がある方が、友人にだけ80万円返済し、個人再生の申立時には120万円しか財産を持っていなかったとしても、返済額が200万円を下回ることはできません。
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