軽度の高次脳機能障害
1 高次脳機能障害はこんな症状
交通事故に遭い、脳に外傷を負った場合、運動機能に障害(体幹バランスが悪くなる、倒れやすくなる、失禁する、運動維持困難、歯車のように規則的な動きとなるなど)が生じる場合や、感覚障害(嗅覚脱失、味覚異常)が生じることがあります。
これらの症状は、被害者本人や周囲の人間が気付くことが比較的容易です。
これに対し、高次脳機能障害の患者は、パッと見る限り、異常はないように見えることが多いです。
それでも、被害者の普段の様子を注意深く見ていただくことで、例えば、記憶力が低下した、注意力が低下した、集中が続かなくなった、すぐ怒るようになった、周囲の人とぶつかることが多くなった、自己中心的になった等の変化が生じていることがあります。
これは、パッと見る限りではわからないのものであり、高次脳機能障害の症状です。
2 自賠責保険における高次脳機能障害
自賠責保険で、高次脳機能障害により後遺障害等級を獲得することも可能です。
高次脳機能障害が交通事故の後遺障害として認定される場合、自賠責の後遺障害等級1~9級の等級に分類されます。
9級 「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」
7級 「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
5級 「神経系統の機能又は精神に障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
3級 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」
(以上が自賠責後遺障害等級別表第2)
2級 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」
1級 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」
(以上が同別表第1)
上記のうち、1級や2級は介護が無ければ生活ができないものであり、重度の高次脳機能障害と言えます。
また、3級は介護を念頭に置いた等級では必ずしもありませんが、生涯を通して働く能力を完全に失ったことを念頭においた等級であり、5級も特に軽い作業以外は生涯を通してできないことを念頭に置いた等級ですので、軽度とはいえないでしょう。
3 軽度な高次脳機能障害とは?
ケースによりますが、等級からして軽度な高次脳機能障害と言えるのは、7級、9級でしょうか。
7級は軽い労務作業(5級よりも可能な作業の範囲が広い)であれば可能とされる等級であり、9級は7級よりも更に可能な作業の範囲が広くなります。
4 7級や9級の具体的な判断基準
自賠責保険において、7級や9級に該当するかは、次の様な判断基準が用いられております。
7級:一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの
9級:一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの
5 労働能力喪失率
自賠責保険では各等級の労働能力喪失率が定められております。
7級:56%
9級:35%
6 高次脳機能障害は弁護士に相談
7級や9級は軽いと述べましたが、5で述べたように35%~56%程度の労働能力の制限が残ります。
これは1級から5級に比べると軽度の高次脳機能障害、という意味に過ぎませんので、7~9級であっても決して軽視できません。
高次脳機能障害が残りそうな場合には、弁護士に相談することを強くお勧めします。
7級や9級であっても、認定されるのとされないのでは賠償金が大きく変わります。
そして、7級や9級であっても、適切な方法で申請しなければ、等級の認定を受けることはできません。
高次脳機能障害に精通した弁護士に相談し、弁護士に後遺障害の申請をしてもらいましょう。
京都で高次脳機能障害に精通した弁護士をお探しの方は、弁護士法人心 京都法律事務所にご相談ください。
高次脳機能障害の賠償金 高次脳機能障害の等級が認定されないときは