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相続放棄した後は誰が管理責任を負うのか

  • 文責:所長 弁護士 伊藤美穂
  • 最終更新日:2023年12月6日

1 相続放棄をすれば管理責任を負わないのが原則

亡くなった方の相続財産や債務を引き継ぎたくない場合には、相続放棄をする必要があります。

相続放棄をすれば、相続開始にさかのぼって、初めから相続人ではなかったことになりますから、相続財産に対する権利も義務もありません。

そのため、相続放棄をした相続人は、相続財産についての管理をする責任もないというのが原則になります。

2 相続放棄をしても管理責任を負う場合がある

相続放棄をした相続人であっても、相続財産に属する財産を現に占有しているときは、財産を管理する責任を負うとされています。

ここでは、「現に占有しているとき」とされていますので、放棄までに管理に一切関与していない財産については義務を負いません

義務の内容としては、法文上は、「その財産を保存しなければならない」とされていますので、積極的な保存義務を負うことまでは意味していないとされています。

いつまで管理責任を負うのかについては、他の相続人や、自分が相続放棄をしたことによって新たに相続人となった者、相続財産清算人に引き渡したときまで管理責任を負うことになります。

相続人への引渡しは、引渡義務が不可分債務である場合には、相続人の一人に対してすることで足りると考えられています。

相続人が財産の引渡しの受領を拒んだときや受領ができないときには、供託をすることもできます。

相続放棄をした者が保存義務を負っており、相続人が不分明である場合には、相続財産清算人の選任を申し立て、相続財産清算人に財産を引き渡すことで、管理責任を免れることができます。

3 民法改正前の管理責任

民法が改正される前までは、相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産と同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならないとされていました。

旧法では、相続放棄をした者の管理責任の内容が不明確であり、相続財産を占有していない場合などにおける管理責任の有無などが不明確であったことから、上述のような内容とされました

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