借金の金額でもめている場合の債務整理
1 金額について債権者と食い違いがある場合
債務の返済が追い付かなくなった場合には、弁護士に依頼して、債権者との話し合いや、裁判所を利用した手続きをとることで、借金の整理をすることができる可能性があります。
ただし、債務の金額がいくらなのか、債権者と債務者の間で意見が分かれている場合には、少し話が複雑になります。
2 任意整理の場合
任意整理とは、債権者との話し合いで、返済額や利息の支払いなどについて個別に和解を試みる手続きです。
しかし、そもそも、債権者と債務者の間で、「全部でいくらお金を支払わなければならないのか?」という点に意見の対立がある場合には、債権者と債務者間で分割返済についていくら話し合っても、合意に至る可能性は極めて低いと考えられます。
そのため、債務の金額自体が争いになっている場合には、少なくとも、その債権者との関係では、任意整理による解決をすることは困難です。
もし、借り入れの状況から見て、債務の金額に争いがない債権者とだけ任意整理による和解をすれば問題が解決できそうだというのであればよいですが、そうでない場合には、そもそも任意整理は有効な選択肢ではないと言えます。
3 自己破産の場合
自己破産の場合には、一部の債権者との間で債務の金額について争いがあったとしても、最終的には解決できる可能性があります。
破産手続きでは、破産債権の査定決定(破産法125条)という制度が設けられており、金額等について争いがある場合には、裁判所の手続きにより、債務の金額を査定し決定することが予定されています。
また、債務者側の立場から見た場合には、破産後に債務の免責を受けられる案件であれば、査定の結果がどうなっても、返済義務を免れることが可能になるので、最終的に債務の負担から解放されることになります。
4 個人再生の場合
個人再生の場合にも、債務の金額について争いがある場合について、民事再生法227条に再生債権の評価という手続きが設けられています。
そのため、破産の場合と同様に、裁判所の手続きのなかで、債務の金額を決めることになります。
ただし、自己破産の場合に比べると、この評価の結果が、債務者に与える影響は大きなものになります。
例えば、個人再生の場合、総債権額が5000万円を超える場合には手続きが認められないというルールがあります。
仮に、債務者側が妥当だと思っていた金額よりも高い金額で、再生債権額が評価されてしまった場合には、上記基準を超えてしまって再生手続きが進められなくなる恐れがあります。
また、争いのある債権が高額に評価された結果、その債権者が債権額ベースで過半数を占める債権者になってしまい、小規模個人再生手続きに反対されてしまうリスクもあります。