特別寄与料と寄与分の違い
1 特別寄与料とは
亡くなった方の財産の維持や増加に寄与した者に認められる権利として、寄与分と特別寄与料というものがあります。
特別寄与料とは、平成30年に民法が改正された際に新たに導入された制度で、相続人以外の一定の方が、亡くなった方の財産の維持や増加に寄与した場合、特別寄与料として一定の金銭の支払いを受けることが認められました。
改正以前には、相続人以外には、遺言書などがない限り、このような権利は認められていませんでした。
たとえば、亡くなった方の長男の妻が、いかに亡くなった方の療養看護に努めていたとしても、そのことについての権利を主張することはできなかったのです。
しかし、この制度が導入されたことで、長男の妻にも、自らの権利として、特別寄与料を請求することが認められるようになりました。
ただし、どのような関係にある者でも、このような権利を請求する資格があるわけではなく、特別寄与料を請求するためには「被相続人の親族」である必要がありますので、注意してください。
2 寄与分との違い
特別寄与料は、寄与分のように相続人にだけ認められた権利ではありませんので、その点の違いがあります。
特別寄与料は、相続人らに対して「金銭の支払い」を請求できる権利となっている一方で、寄与分は、遺産分割における相続分が増えることになり、必ずしも金銭の支払いとはならないという違いもあります。
特別寄与料の請求の相手や内容も、相続人が複数いる場合には、法定相続分または指定相続分にしたがって請求することになっていますので、金銭の支払いに限られるという点も含めて、具体的な権利の性格は、どちらかというと遺留分侵害額請求権に近い特徴があります。
特別寄与料の請求には、「相続の開始および相続人を知ったときから6か月以内」、「相続開始の時から1年以内」という期限もありますので、寄与分が相続開始から10年まで主張できることに比べると、かなり短い期限となっているため、注意してください。
特別寄与料が認められる療養看護等での要件は、寄与分の要件とほぼ同一の内容だと理解されており、認められるハードルはかなり高く、容易に認められるものではありませんので、しっかりと主張をしていく必要があります。
特別寄与料の請求手続きは、遺産分割とは別個のものですから、寄与分の定めでは遺産分割調停・審判手続きとの併合が強制されているのと異なり、原則として、裁判での手続きも遺産分割調停・審判手続きとは別にすることになっています。
調停手続きでも解決できない場合には、家庭裁判所が「特別の寄与に関する処分の審判」をして、特別寄与料を定めることになります。